2025/08/31

赤いトマトを食べたい

  すさまじい暑さが続く今夏は、多くの野菜が不作に見舞われています。高温、少雨、そして一部地域では局地豪雨が相次ぐ異常気象、これでは野菜や果物がまともに育つわけがありません。

 都内のスーパーでは、キュウリ、トマト、ナス、ピーマンなどが例年に比べ、軒並み13割ほど値上がり、小ぶりで、色づきの悪いものも目立ちます。

 農作物の不作は、私たちフードバンク活動にも影響を与えます。農家や問屋さんのご厚意を受けて「形が悪い」「キズがある」「少し日数が経過」などの理由で、まだ食べられても商品として売れない「余剰青果」を無償提供してもらうのがフードバンク。不作となると、この余剰青果が減ってしまい、結果として私たちフードバンクへの供給も少なくなるという構図です。

 生活に苦労する家庭では、物価高騰を受けてスーパーでの買い物を切り詰める人が多く、やむなくフードバンク支援に頼ろうかという時に、フードバンクからの提供が減るのは本当に辛い話です。農家や青果問屋さんの責任でもなく、悪いのは「お天気」ということになりますが、実はこの異常気象を招いたのは、温室効果ガスを排出し続けた人類の責任なんですね。

 不作の「果菜類」の中でも、特にトマトの出来が悪いといいます。産地からの報告によると、トマトは葉や茎が枯れて実がブヨブヨになったものもあるそうです。トマトは高温多湿に弱い作物です。原産地が南米アンデスだからでしょうか。

 報道によると、例年8月下旬は、産地リレーにより東北、北海道産のトマトが首都圏の店頭にも並びますが、今年は北海道、東北も猛暑の毎日で不作になったそうです。トマトは子どもたちに人気の野菜です。今年は食べさせたくても、ほとんど届けることができないのが現状です。

 このトマト、日本でも今では「人気の野菜ベストスリー」に入るほど広く食べられていますが、昔の日本人の食べ方はもっぱら「生食」でした。

 そういえば、私も子どもの頃、夏の暑い日に、畑からもぎたてのトマトを丸かじりしたのを憶えています。どこか青臭く、酸っぱく、野生の味がしたものです。母親は来客があると、冷やしたトマトを切って、砂糖をかけて茶菓代わりに出していました。トマトは「野菜」ではなく、「果物」だったのですね。

 その後、欧風料理の普及とともに、日本でもスパゲッティ、ピザ、煮込み料理、スープ、ソース、もちろんサラダの材料として家庭料理にも広く使われています。因みにアメリカは、トマトよりもケチャップ文化ですよね。

 私自身、時々、スパイスカレーをつくりますが、トマトはたっぷり使います。イタリアン、エスニック料理とも香辛料とトマトは欠かせません。

 中でも、朝食の目玉焼きはトマトと一緒に焼きます。アフガニスタンを旅していた時によく食べたものです。中東の一部諸国で、目玉焼きはこのスタイル。卵にトマトの甘さが加わって、なかなかの味です。

 まさにトマトは「煮てよし、焼いてよし」の素晴らしい野菜です。

 今夏は私もスーパーの買い物に行って、トマトやキュウリなどは買い控えでした。来年以降も猛暑が続くとなると、青果はまた不作になるのでしょうか。店頭から消えることはなくても、価格がさらに高騰する恐れはあります。米ばかりか、魚なども。

 日本の食卓はどうなっていくのでしょうか。とても心配です。 (有道)



2025/08/29

もうすぐ2学期

  子どもたちの夏休みも残すところ、あと僅か、間もなく2学期が始まります。連日の猛暑続き、皆さん、どのような夏を過ごしましたか。

 私たちが食料を配る子どもたちは、毎日、きちんと食事が出来たのでしょうか。給食がない夏休み期間中、自宅で1日3回、きちんと食事ができたのか心配していました。

 都内に拠点を置くNPO団体が発表した調査結果があります。

 一部報道されたので目にされた方もいると思いますが、首都圏、関西、九州の3地域で食料配布を受けるひとり親家庭(有効回答者数2,105人)を対象に、「夏休み中の家計状況」をアンケート調査(20256月実施)したものです。

 それによると、「子どもの1日の標準的な食事回数」について、「夏休み期間中」は①3回=61.4% ②2回=31.2% ③1回=1.0%となり、「学校給食がある期間」に比べ2回が19.2ポイント、1回は0.1ポイントそれぞれ上昇、逆に3回は19.9ポイント減少しています。その理由として「経済的余裕がなく十分な食事の用意が難しい」=40.4% 「子どもの生活リズムが崩れるため」=28.2% 「食事を用意する時間的余裕がない」=25.0%  (いずれも特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパン調べ)

  これ以外にも「米高騰が夏休み中の食事に与えた影響」との問いに対し「米以外の主食(パン、麺類など)で代用する」=67.1% といった調査結果も報告されています。

 夏休み中は、欠食児童が増えることはかなり前から指摘されていますが、昨今は特に、米をはじめとする物価高騰で、その数がさらに増えていると伝えられます。

 私たちが活動する東京都多摩市、稲城市を中心とする地域でも、「食事を満足にできない子ども」が相当数存在すると思われます。それは分かっていても、実際にそういう子どもたちが、どこに、どれだけいるのか把握するのは容易ではありません。

 各家庭の食事というのは、どちらかというとプライベートに属する部分であり、なかなか窺い知ることができないのです。余程のことでもなければ、「あんたの家は朝昼晩、何を食べてるのさ」と聴くこともないし、話すこともないでしょう。家計が厳しく「おかずは一品だけ」で細々と食事をする家もあれば、豪壮な家に住み高級車を乗り回す家庭でも、3度の食事はすべてレトルト食品という人もいます。まさに家庭の食事は「千差万別」なんですね。

 中でも「家で満足に食事ができない子ども」を外から知るにはかなりの努力を必要とします。「お母さんがご飯つくってくれなかった」「冷蔵庫に何も入っていなかった」などと食事を抜いている子は、友達にも、学校の先生に黙っています。恥ずかしくて口にできないでしょう。一人で我慢するだけです。

 子ども食堂に来て「むさぼるように食べている子」を見て、ボランティアの女性が「この子はきっとお昼を食べていないのね」と気づくこともあります。

 十分な食事が出来ない子どもについては、行政機関も「子育て相談の窓口」などで、ある程度、把握しているはずですが、フードバンクのような民間の団体には「個人情報」を理由にほとんど情報を提供しません。

 私たちは、寄贈された食品を子どもたちに届けたくても、本当に必要とする家庭を探し出し、つながりを、どう確保するか、いつも頭を悩ませています。

 私たちソスペーゾ多摩は配布先の情報を集めるのに、食品を直接配布する中間支援団体を頼りにしています。それぞれ地域で福祉関連施設、食堂などを営んでいる方なので、かなり詳しい地域情報が集まります。要するに個人的つながりによる密着情報です。

 「シングルマザーのAさんは最近体を壊して生活が苦しい」「Bさんは物価高騰で満足に買い物に行けない」など。

 ある施設は、こうした詳しい情報を基に配布数量、内容まで決めています。私たちの活動は、地域の方々のサポートに支えられているのですね。

 ソスペーゾ多摩は食品配布のパントリー事業だけでなく、子ども食堂にも食料を届けます。この子ども食堂も「本当に困っている子どもたちだけに対象を限定すべきか」「困窮度の選別などできるのか」「高齢者の食事希望者はどうするのか」などの問題にぶつかります。

 食の支援には単純に割り切れない多様な問題があります。多くの団体も苦労していることでしょう。ソスペーゾ多摩も模索を続けながらメンバーの力を合わせ、できる限りの貢献をしたいと思います。 (有道)



2025/08/10

消えた蝉しぐれ

 盛夏だというのに、今年は蝉の鳴き声があまり聞こえて来ません。鳴いてはいますが、例年のように辺り一面に降り注ぐような「蝉しぐれ」には程遠く、どこか元気がないように感じます。

 昆虫学者によると、梅雨が短く終わり、猛暑で地中温度が上昇、羽化のタイミングを逃した幼虫が多かったのではないか、ということのようです。やはり異常気象のせいですか。確実に自然の営みが壊れていますね。

 この「蝉しぐれ」、どうしても8月15日の「終戦の日」とイメージが重なります。蝉が鳴かない「終戦の日」は想像できないのです。私一人の感覚かもしれません。「国民が終戦を知ったあの日も、暑く、しきりに蝉の鳴く声が聞こえるだけだった」などと、語られることが多いからでしょうか。

 お盆の季節に「広島、長崎の原爆、終戦の日」と続くので、日本人にとって「鎮魂の8月」と言われます。ふだんは自堕落な生活を送っている私も、さすがに、この時期は「戦争と平和」を考えます。

 今年は戦後80年。廃墟から立ち上がり、高度成長で平和と繁栄を達成したかに見えた時期もありましたが、日本は今また、混乱と不安、不信の時代にあります。

 日本の戦後について論じるのは、このコラムの趣旨ではありませんが、ひとつだけ言わせていただくと、「いまだに食事をまともにできない子どもたちが存在し、私たちのようなフードバンクが食料を配って歩く世の中になるとは、想像だにしなかった」ということです。終戦直後の食糧難の時代ではないのです。

 豊かな飽食の時代を謳歌する人がいる一方で、子どもが食事に事欠く家庭があります。この「貧富の差拡大」と同時に深刻なのが「地域社会の崩壊」。昔は困った家庭があると、祖父母や親類、近所のおじさん、おばさん、皆が、なんだかんだ言って子どもの面倒を見たものです。

 「都市化、核家族化、経済構造が変化した必然の結果」と言ってしまえばそれまでですが、私たちが支援するシングルマザーの家庭で、両親や親類からのサポートがとても少ないことに気がつきます。結局、行政かフードバンクしか頼るところがない、ということになるんですね。

 この80年、日本人の生活レベルは飛躍的に進歩しましたが、本当に幸せになったのか、議論は分かれるでしょう。フードバンクから食料をもらう子どもたちには将来、幸せをつかんでほしいと願うばかりです。

 余談ですが、かつて海外で「蝉の鳴き声」を意識したことはありませんでした。蝉は東南アジア、アメリカ大陸など世界各地に分布しているはずですが、なぜか聞いた記憶がないのです。街中ではなく、森の中で鳴いていたのでしょうか。外国人には「雑音」にしか聞こえないといいます。俳句の季語にもなる「蝉の声」に情緒を感じるのは日本人だけかもしれませんん。  (有道) 



2025/08/03

クロワッサンはいかが

 生活協同組合 パルシステム東京から先日、大量のクロワッサンが届きました。

厚く御礼申し上げます。

 パルシステム東京には、定期的に野菜・果物も提供してもらうなど、大変お世話になっています。同協同組合は、新型コロナが発生した2020年に「暮らしに困っている方をお米で支える募金」の制度を設け、それ以降、都内のフードバンク団体、子ども食堂などへお米を配っているとのことです。

 私たちソスペーゾ多摩も毎年、たくさんのお米を寄贈いただいています。ところが今年は、お米の配布ではなく、代わりにパンの支給となりました。

 同協同組合多摩センターの増田さんは「大変残念ですが、昨年秋からのお米価格高騰の影響を受けて、数量確保が厳しい状況が続いています。どうかご了承ください」と、苦しい事情を話しています。

 お米価格高騰の影響はこういうところにも及んでいるんですね。お互い、我慢するより仕方ありません。同協同組合がお米の代わりに、わざわざパンを調達し、子どもたちに届けてくれたことに感謝します。

 いただいたのはロングライフのクロワッサン。ちょっと甘味があって、とても美味しい。おやつとしても食べられます。パンの支給は珍しいので、子どもたちは大喜びでした。 

(有道)