2026/08/09

今また「二十四の瞳」を観る

   猛暑の中、今年もお盆の季節がやって来ます。

 「広島、長崎の原爆の日」「終戦の日」と続く日本の8月。戦争と平和のことを思う時ですが、私には忘れられない1本の古い映画があります。

 日本の映画史上、不朽の名作と言われる「二十四の瞳」(1954年、木下恵介監督・脚本)(注1)。瀬戸内海の小豆島を舞台に、激動の時代を生きた若い女性の先生と生徒の触れ合いを描いた作品です。

 幼いころ、私は母親に連れられて町の映画館で、リバイバル上映を観た記憶があります。小豆島の珍しい風景を断片的に憶えていただけでしたが、大人になって改めて観る機会があり、「反戦映画」としてのこの映画のすごさを初めて知りました。

 映画でもリメイクされ、何度もテレビドラマ化されているので、中年以上の世代なら一度は観たことがあるはずです。

 ストーリーは、昭和3年(1928年)、瀬戸内海の小豆島の岬の分教場に新任の若い女性教師「大石先生」が着任するところから始まります。児童12人のクラスの担任に。当初は田舎の古い慣習に苦労しながら、貧困の中でも純粋さを失わない子どもたち(注2)と交流を深めて行きます。

 のどかな田舎の学校にも時代の波が押し寄せ、先生は軍国主義の大きな圧力(戦争)から子どもたちの命と将来を守ろうと抵抗しますが、その後、教え子は戦地に駆り出されて戦死、先生の夫も戦死、末娘も病気で亡くします。昭和の戦争の時代に悲哀を背負って生きた女性を高峰秀子が見事に演じています。

 映像が美しく、物語の構成が素晴らしい。白黒の銀幕の中での高峰秀子の美しさ、目を奪われます。

 この作品のテーマは、先生と生徒の「師弟愛」でもありますが、私には「時代の流れに翻弄される人の運命」「どうしようもできない人間社会の不条理」の方に強く心を動かされました。

 昭和3年から21年まで18年間の物語。戦闘場面はひとつもないのに戦争の怖さ、悲しさを徹底して描いています。封切り当時は、戦争を生き抜いた戦中派の人がまだ多く建在だったので、「涙なしではみられない映画」と言われたようです。戦争体験者でなくても、日本人なら、この映画を観て涙を流さない人はいないでしょう。

 現代の若い人がこの映画を観て何を思うのでしょうか。

 98年前の日本の話。映画の中に見る風景や時代状況、人々の価値観があまりにも今の時代とかけ離れていて、恐らく「歴史物語」か「遠い異国の世界の物語」にしか見えないかもしれません。私たち昭和の世代には明治時代を「教科書で知る歴史」と考えるように、今の若い平成、令和の世代には、昭和が私たちの明治と同じく「教科書で知るだけの歴史」という人が増えているそうです。

 風景や時代背景が今とは全く異なっていても、この映画が訴える「いかなる時代も変わらない人間社会の不条理と人間の尊さ」は、現代にも通じるものがあるように思います。「日常の生活が突然、時代の運命に奪われる」という怖さです。

 現代はモノにあふれ、繁栄しているかのように見えながら、世界各地で終わりなき戦争、国内でも貧富の格差拡大、教育格差の拡大、個人の尊厳が無視される殺伐とした社会です。

 今、改めて「二十四の瞳」を観るのも良いかもしれません。   (有道)

(注1)原作は壷井栄の同名のロングセラー小説

(注2)演技経験のない素人の子どもを全国で公募、
   12組24人の子どもたちが演じた
 

📸 封切り時のポスター、時代を感じる 

📸 「大石先生」と12人の子どもたち

夏の夜を彩る花火

 日本の「夏の風物詩」と言えば、何といっても「花火」でしょう。

 盛夏の8月、「ドドーン、ドーン」と大きな音を響かせ、華やかな大輪の花を夜空に咲かせる打ち上げ花火。各地で開催される花火大会は人々を魅了します。

 花火大会もいいけど、自宅の庭先で楽しむ花火(注1)も楽しい。シューッ、パチパチと燃える音。暗闇の中にまぶしく輝く光。モクモクと上がる煙の臭い。花火は幼いころの遠い記憶を呼び起こしてくれます。

 夏になると雑貨店やスーパーなどの店先に花火セットが並びます。子どもが花火が大好きなのは今も昔も同じ。定番の「手持ち花火」に始まって「噴水型」、「打ち上げ(ロケット花火)」など様々あります。私が子どもころは、地面を激しく回転して走り回る「ネズミ花火」、火をつけると黒い灰がヘビのようにニョロニョロと伸びていく「スネーク花火」が人気でしたね。最近はあまり見掛けませんが、もうつくっていないのかな。

 私が好きなのは「線香花火」。時代は変わっても形を変えることなく、多くの人をひきつけ、根強い人気があります。火をつけると、小さな火の玉がふくらんで、火花が勢いよく飛び散ったかと思うと、小さく細い光が飛び散り、最後に赤い球がぽとりと落ちて消える‥‥

 「あーあ、終わった」。わずか数十秒という短い時間。一瞬に輝いた美しさの後に、静寂と消滅を迎えるので、線香花火を「人生のはかなさ」に例えることも多いようです。皆が皆、線香花火で「人生のはかなさ」を感じるわけではありません。ただ、私が子どものころも、線香花火は最後にやるものと何となく決まっていて、線香花火が燃えるのを見て誰もが黙ってしまうのを憶えています。こども心に何かしらの「寂しさ」を感じたのでしょうか。

 線香花火は江戸時代前期に子どもの「玩具」としてつくられたそうです。稲わらなどの先に火薬をつけて香炉などに立てて遊んだといいます。その姿が仏壇の線香に似ているので「線香花火」の名前がついたとか。ただの「おもちゃ」でしかなかったものが、庶民の間で広く親しまれるうちに、その「燃え方」を見て大人が「人生のはかなさ」と形容したのでしょう。

 「人生のはかなさ」は「この世はすべて移ろい変化し、永遠にとどまることはない」という仏教の「諸行無常」の真理ともつながります。花火には、先祖の霊を導くお盆の「迎え火」や「送り火」と重なるものがあるのでしょうか。

 ずっと前のことですが、日本に住むアジア、欧州からの外国人との間で「線香花火(Senkouhanabi )って知っている?」と話題になったことがあります。外国には、もちろん「線香花火」なるものは存在しないし、「花火を見て『はかなさ』を感じるのは日本人だけ。でも、そういうとらえ方は理解できる」と答えたフランス人女性は、異文化が分かる人でした。

 私たちフードバンクが支援する子どもたちは今、夏休みの真っ最中。もちろん、「人生のはかなさ」など、今から感じるのは早すぎです。線香花火よりも、派手な花火を元気よく打ち上げ、真夏の夜を思いっきり楽しんでくださいね。   (有道)

(注1)外国ではフェスティバルや記念日に打ち上げる豪快な花火が主流。日本のように公園や家庭で手持ち花火を楽しむ文化はほとんどない。もともと火薬類に対する取り締まりが厳しく、花火は安全上の理由から「違法」「許可制」とする国も多い。日本も「防火」「騒音」などの理由で、最近は家庭花火も場所が制限されるところが増えている。

📸 火花を散らす線香花火 

2026/08/02

夏休みのお知らせ

  ソスペーゾ多摩は、8月13日(木)~8月17日(月)まで夏休みです。

  この間、集荷、配布とも活動はお休みします。  

 小・中学校が夏休みで給食がなく、子どもたちは私たちが届ける食料を待っているかと思いますが、この期間は青果市場も休みなので、いつもの野菜や果物も入荷しません。配布先の一部施設や学校も休みに入ります。

 酷暑の毎日が続いていますが、皆さんも暑さ対策に気をつけ、元気でこの夏を乗り切ってください。   (有道) 

📸 日本の夏は花火大会

熊本地震 お見舞い申し上げます

  2026年7月28日、熊本県を震源とする大きな地震(M7.1)が発生しました。被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

 この地震で命を落とした方々のご冥福をお祈りし、ご遺族の皆様には謹んでお悔やみ申し上げます。

 時間が経つにつれ被害の深刻な状況が明らかになっています。余震が続く中、酷暑やインフラ寸断により、今も不自由な避難生活を続ける現地の方々のご心労をお察しします。10年前の地震の復興もまだ完全に終わらない中で再び大地震。「私が生きている間はもうないと思っていたのに」。TVインタビューに答える年配女性の言葉に心が痛みます。

 酷暑の中、被災者の救援・復旧に尽力されている方々に敬意を表するとともに、被害がこれ以上、拡大することなく被災地の安全が回復し、1日も早く元の生活に戻ることを願っています。

 少しでも支援できれば、と思い、都心に出掛けた際に銀座にある熊本県アンテナショップに立ち寄りましたが、店の前は長蛇の列。皆さん、考えることは同じ、遠く離れていても「少しでもお役に立ちたい」という気持ちなのでしょう。

 ソスペーゾ多摩が食料支援する外国人日本語学校の校長から「生徒たちがすごく心配している」とのメールがありました。

 報道によると、発生直後から、世界80か国・地域、国連など2機関からお見舞いのメッセージが届いたそうです。イタリアのメローニ首相はX(ツイッター)に「日本国民に深い連帯を寄せている」。フランスのマクロン大統領もSNSで「日本を襲った困難に際し、フランスは日本国民に深い連帯の意を表します」。

 このほかウクライナのゼレンスキー大統領、台湾の頼清徳総統、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領らからもメッセージが届いたということです。

 気候変動による異常気象など世界各地で自然災害が頻発しています。世界の人々は今回の熊本大地震を他人事ではなく、強い関心を持って見守っているのだと思います。(有道) 

📸 地震発生を伝える新聞各紙  

📸 気象庁発表の震度地図 

2026/07/26

まだまだ続く酷暑の夏

  「猛烈な」というか、「強烈な」暑さが続いています。

 気象庁は今年4月、「酷暑日」(40以上)を正式な予報用語として採用しました。「酷暑日」は、もともと通称として使われていた言葉ですが、近年の記録的な暑さを受けて、最高レベルの暑さを記録する表現として定めたわけです。

 参考までに、気象庁が天気予報で使う暑さの呼び名は次の通りです。

〈夏日〉最高気温が25以上
〈真夏日〉最高気温が30以上
〈猛暑日〉最高気温が35以上
〈酷暑日〉最高気温が40以上
〈熱帯夜〉夜間の最低気温が25以上

  気象庁は、この「40以上の新呼称」を決める前にアンケート(注1)を実施、その中で断トツの1位となった「酷暑日」を選んだということです。

 来年以降も、さらに気温の上昇が予想される中で、「酷暑日」以上に気温がさらに高くなった時はどうするのだろうか。今から心配になりますね。でも問題ないでしょう。今回のアンケートでは他にも多数のアイデアが寄せられています。

 気象庁の発表によると、2位以下で回答数が多かったのは「超猛暑日」「極暑日」「炎暑日」「烈暑日」「激暑日」「厳暑日」「熱暑日」など。そのほかユニークな回答もありました。「劇アツ日」「危険猛暑日」「自宅待機日」「極猛暑日」「サウナ日」「鬼暑日」「沸騰日」など。

 私は、「熱暑日」または「炎暑日」がいいかな、と思います。若い人は「超(チョー)暑日」かなあ。皆さんはどうですか。

 この「酷暑日」、7月から気象庁の発表やお天気ニュースなどで早速登場しています。先週末も東海から中国、四国にかけて「命にかかわる」ような危険な暑さとなり、国内では4日連続で40を超える「酷暑日」を記録したと伝えられます。

  tenki.jpによると、2025年7月30日~8月2日、2013年8月10日~13日が最高記録に並ぶ連日の酷暑とのことです。酷暑はこれにとどまらず、7月下旬から8月初めにかけても続くとの予報が出ています。昨夏もかつてない酷暑に苦しみましたが、今年はそれを超えそうな気配です。加えて、8月には豪雨被害、台風の到来が心配されます。

 各種報道でご承知のように、今年は欧州でも異常高温が深刻のようです。ライン川の水位が低下、フランスでは6月下旬の熱波で最高気温40前後を各地で記録。自然保護意識が強く温室効果ガス排出するとしてエアコン普及率が低いフランスですが、今年はエアコンを購入する人が電気店に殺到していると伝えられています。

 私たちソスペーゾ多摩も連日、酷暑の中での活動です。フードバンク活動の大敵は雨と暑さ。冬の寒さはほとんど苦になりませんが、屋外の仕事が多いので、夏の厳しい暑さで体力を消耗します。

 暑さ対策は各個人の常識に任せていますが、それでも、熱中症には最大限注意し水分は十分に取る暑さに対応した服装無理をせず、きちんと休憩をとる、などを申し合わせています。今のところ、特段の被害は出ていません。   (有道)

 (注1)気象庁が2026年2月から3月にかけ実施。478,296件の回答があり、「酷暑日」が20万2,954票を獲得した。


歓喜に沸くスペイン

  サッカーのW杯北中米大会の黄金のトロフィーは、決勝でアルゼンチンを延長1-0で下したスペインの手に渡りました。

 10代の天才プレーヤーを抱えるスペインの堅守に、アルゼンチンはシュートゼロの完敗。神の子メッシのゴールも不発。試合終了のホイッスルが鳴った後、ピッチに座り込み、呆然と天を仰ぐメッシの姿が印象的でした。マラドーナの時代からアルゼンチンサッカーを応援してきた私もガックリでしたね。

 帰国した各国代表の出迎えは悲喜こもごも。出迎え風景はそれぞれ国民性がうかがえて、なかなか面白かった。スペイン代表は当然ながら国民が大歓声で出迎え、国王フェリペ6世、サンチェス首相に優勝を報告した後、首都マドリードでの凱旋パレードには200万人が繰り出したそうです。史上初めてベスト8入りを果たしたノルウエーも、王宮前広場で10万人を超えるサポーターが、おなじみの「バイキングロー」で祝福しました。

 悲惨だったのはグループステージ敗退に終わった韓国。仁川国際空港に代表チームが降り立つと、ホン・ミョンホ監督らに対する怒号と罵声が飛び交い、歓迎セレモニーも中止になったと伝えられます。

 日本代表は羽田と成田に分かれて帰国、決勝T1回戦で敗退しながらも、温かく迎えられました。「元気をもらいました」という女性ファンの言葉は、日本ならではの感謝の表現なのでしょう。

 一番惨めだったのはブラジル代表。決勝T1回戦で日本に勝利したものの、続くイングランド戦は1-2で敗れ、1990年大会以来初めてラウンド16で姿を消しました。ブラジル代表は米国で現地解散、帰国チャーター便に搭乗した選手は一人だけで、他の選手や役員はいずこかへ姿を消したそうです。

 国民のほぼ全員が熱狂的なサッカーファンのブラジルでは、W杯で負けると「生きて帰れると思うな」と言われます。過去の大会でも良い成績を残せなかった時は、アマゾンなどのローカル空港にこっそりと帰国するのが常識となっています。

 W杯で勝つか負けるかは天地の差。ブラジルも優勝した時は国中がひっくり返るほどのお祭り騒ぎとなります。1994年アメリカ大会で優勝した時は、リオデジャネイロの凱旋パレードに私も駆けつけました。花火が打ち上がり、鳴り響くサンバの太鼓。街中が歓声で地響きのように揺れたのを憶えています。ちなみにこの大会では、ブラジルではありませんが、オウンゴールをした南米コロンビアの選手が帰国後に射殺される事件も起きています。

 良くも悪くも、世界の人々をこれだけ熱狂させるのがサッカー。私たちソスペーゾ多摩が支援する多摩市内の外国人日本語学校には、多くのブラジル人留学生が学んでいます。今回のW杯で彼らの熱狂的な応援はこちらも熱くなります。「さすがサッカー王国ブラジルだ」と思います。

 決勝戦のチケット価格が平均250万円(最高400万円、最低120万円)と高騰、「カネまみれの大会」と批判を受けながら、今回の北中米大会は、チケット代金、放映権料など大会本体だけでも総額150億ドル(2兆4000億円)という巨額の収入を上げたと伝えられます。

決勝戦では初めて、ハーフタイムに既定時間を超えてショータイムが設けられ「マドンナ」「BTS」「ジャスティン・ビバー」らスターが登場、まるでスポーツショーでした。表彰式でトランプ米大統領と、その後を付いて歩くインファンティーノFIFA会長の姿は見るに堪えませんでしたね。

世界で最も愛され、最も競技人口が多いサッカーは誰のものか。世界の街角で、路地裏で、広場で、粗末なボールを夢中になって蹴る子どもたちの姿があります。

庶民のスポーツであるサッカーが、格差社会に象徴される米国流のスポーツビジネスに飲み込まれるのは、残念としか言いようがありません。 (有道) 

📸 優勝トロフィーを授与され喜ぶスペイン代表。スペインサッカー協会など各公式写真は、表彰式で「あの人」の姿をカットしたものが多いようです。

2026/07/19

オンライン講義で現場見学

 多摩市内の大学で社会福祉を学ぶ学生たちが、ソスペーゾ多摩の現場作業をオンラインで見学しました。

 大妻女子大の人間共生学部福祉学科(井上修一教授)が、多摩ボランティア・市民活動支援センターの協力を受けて企画。7月15日(水)の午後、多摩市唐木田にある大妻女子大の教室と、ボランティア・市民活動支援センター(同市関戸)、ソスペーゾ多摩倉庫(同市豊ヶ丘)をそれぞれオンラインで結んでの講義です。

 ソスペーゾ多摩の吉岡美香代表がソスペーゾ多摩の組織概要とともに、フードバンク活動の目的、現状などを説明。倉庫ではちょうど、ソスペーゾ多摩のメンバー3人が食料配布の準備作業中で、その様子を学生たちが教室で見ることができました。

 この日は、フードバンクの他にも同センターの「街づくり活動」、「学習支援活動」についても紹介がありました。パソコン画面からは教室の学生たちの表情がはっきり見えませんでしたが、熱心に聴いてくれたことでしょう。

 大学生のような若い世代が一人でも多く、フードバンクなど、さまざまなボランティア活動を知ってほしいですね。   (有道)

 📸 倉庫で配布食料の仕分け作業。