猛暑の中、今年もお盆の季節がやって来ます。
「広島、長崎の原爆の日」「終戦の日」と続く日本の8月。戦争と平和のことを思う時ですが、私には忘れられない1本の古い映画があります。
日本の映画史上、不朽の名作と言われる「二十四の瞳」(1954年、木下恵介監督・脚本)(注1)。瀬戸内海の小豆島を舞台に、激動の時代を生きた若い女性の先生と生徒の触れ合いを描いた作品です。
幼いころ、私は母親に連れられて町の映画館で、リバイバル上映を観た記憶があります。小豆島の珍しい風景を断片的に憶えていただけでしたが、大人になって改めて観る機会があり、「反戦映画」としてのこの映画のすごさを初めて知りました。
映画でもリメイクされ、何度もテレビドラマ化されているので、中年以上の世代なら一度は観たことがあるはずです。
ストーリーは、昭和3年(1928年)、瀬戸内海の小豆島の岬の分教場に新任の若い女性教師「大石先生」が着任するところから始まります。児童12人のクラスの担任に。当初は田舎の古い慣習に苦労しながら、貧困の中でも純粋さを失わない子どもたち(注2)と交流を深めて行きます。
のどかな田舎の学校にも時代の波が押し寄せ、先生は軍国主義の大きな圧力(戦争)から子どもたちの命と将来を守ろうと抵抗しますが、その後、教え子は戦地に駆り出されて戦死、先生の夫も戦死、末娘も病気で亡くします。昭和の戦争の時代に悲哀を背負って生きた女性を高峰秀子が見事に演じています。
映像が美しく、物語の構成が素晴らしい。白黒の銀幕の中での高峰秀子の美しさ、目を奪われます。
この作品のテーマは、先生と生徒の「師弟愛」でもありますが、私には「時代の流れに翻弄される人の運命」「どうしようもできない人間社会の不条理」の方に強く心を動かされました。
昭和3年から21年まで18年間の物語。戦闘場面はひとつもないのに戦争の怖さ、悲しさを徹底して描いています。封切り当時は、戦争を生き抜いた戦中派の人がまだ多く建在だったので、「涙なしではみられない映画」と言われたようです。戦争体験者でなくても、日本人なら、この映画を観て涙を流さない人はいないでしょう。
現代の若い人がこの映画を観て何を思うのでしょうか。
98年前の日本の話。映画の中に見る風景や時代状況、人々の価値観があまりにも今の時代とかけ離れていて、恐らく「歴史物語」か「遠い異国の世界の物語」にしか見えないかもしれません。私たち昭和の世代には明治時代を「教科書で知る歴史」と考えるように、今の若い平成、令和の世代には、昭和が私たちの明治と同じく「教科書で知るだけの歴史」という人が増えているそうです。
風景や時代背景が今とは全く異なっていても、この映画が訴える「いかなる時代も変わらない人間社会の不条理と人間の尊さ」は、現代にも通じるものがあるように思います。「日常の生活が突然、時代の運命に奪われる」という怖さです。
現代はモノにあふれ、繁栄しているかのように見えながら、世界各地で終わりなき戦争、国内でも貧富の格差拡大、教育格差の拡大、個人の尊厳が無視される殺伐とした社会です。
今、改めて「二十四の瞳」を観るのも良いかもしれません。 (有道)
(注1)原作は壷井栄の同名のロングセラー小説
(注2)演技経験のない素人の子どもを全国で公募、
12組24人の子どもたちが演じた
📸 封切り時のポスター、時代を感じる
📸 「大石先生」と12人の子どもたち
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