プロ野球読売ジャイアンツの監督が家庭内暴力の容疑で逮捕される事件が起きました。
政治家や芸能人の個人生活に絡むスキャンダルには関心がありませんが、今回はDVというよりChatGPTをめぐる議論に発展したので、改めてこの問題を考えてみます。
報道の範囲でしか分かりませんが、監督から暴力を受けた長女がChatGPTに相談し、そのアドバイスで児童相談所に連絡、警察が駆けつける騒ぎになった、ということのようです。今や、ChatGPTに絡むトラブルは日本でも海外でも珍しくなく、これが有名人ではなく、一般人の事件だったらニュースにもならず、まったく注目されなかったはずです。
事件後に公表された長女の手紙には、自らの意向に反して父親が逮捕されたことへの驚きと戸惑いが書かれています。「こんな騒ぎになるとは思ってもいなかった」ということでしょう。児童相談所や警察が民事の家庭問題にどこまで介入すべきか、常に問われる難しい問題です。
仮にChatGPTでなく、親しい友人や信頼できる大人に相談していたならば、どうなっていたか。「もう少し冷静になって話し合ってみたらどうか」などのアドバイスがあったかもしれません。いずれにしても、ChatGPTの答えが適切だったのか、今となっては何とも言えません。
内閣府が2026年2月に実施した「生成AIの利用実態に関するアンケート」によると、利用者の2割超が毎日AIを使用。特に10代女性の52・4%が「悩み相談」の相手としてAIを利用しており、若年層における日常的なメンタルケアやアドバイスの手段として生成AIが定着しています。
知り合いの研究者(注1)の話では、AI(人工知能)は、各情報に対する人間の評価を基に学習して、評価が高く、ユーザーが喜び、同意してくれる情報ほど「良い回答」として集約します。結果として、AIの回答は相手に話を合わせる方向へ傾いていくのです。
AIへの相談は、悩みを打ち明けると「優しく受け止めてくれる」のが特徴。「辛かっただろうね」「あなたは悪くない」などの言葉に救われます。「何、バカな事をやっているのか」などと決して怒ったりしない。しかも24時間、いつでも話を聴いてくれ、秘密は絶対守ります。匿名のSNS上で悩みを打ち明けると、ひどい言葉を投げつけられたり、炎上したりする危険もあります。「AIなら傷つけられることはない」ということです。
一方で、AIとの心地よい会話で引き出す回答は、現実の厳しさに目を背けることにもなります。AIが相談者に「寄り添ってくれる」のは、別に「心優しい」からではなく、顧客をつかんで、しっかり課金(相談料)して稼ぐビジネスのためです。
ところで、私たちフードバンクが支援する家庭では、ChatGPTなどAIの悩み相談にどう向き合っているのでしょうか。ソスペーゾ多摩がアンケートを実施したこともなく、実態はよく分かりません。
支援家庭の中には「仕事や病気」など悩みを抱え、経済的に苦しむ人も少なくありません。相談して頼れる親類や友人も少ない「ひとり親家庭」もあります。辛い時に人は相談相手を求めます。どうしてもChatGPTなどに相談したくなるでしょう。
大人は「AIの危うさ」を承知で付き合うことができますが、子どもたちはAI情報を疑わずに受け入れてしまいます。ChatGPT相談やチャットに過剰にのめり込まないように、きちんと見守ってあげる事も大人の役割だと思います。 (有道)
(注1)AIではなく実在する人間。このコラムでは基本的にAI情報は扱わない。
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