高原野菜の産地として知られる長野県川上村。 レタス農家のご主人がTVインタビューで、参院選挙を前に「争点」となった「外国人問題」について答えていました。
「うちは従業員10人のうち9人が外国人。こちらの農家は外国人がいないと100%成り立ちませんね」
レタスの収穫は、夜明け前の午前3時ごろからヘッドランプを点けてのハードな仕事だ、と聞いたことがあります。私たちフードバンクが配る野菜などの食品が、いかに多くの外国人の手を借りて生産されているのか、と実感します。
それにしても、今回の参院選で「外国人問題」がなぜ争点として急浮上したのでしょうか。本当に「日本の今後を左右する重要課題」だったのでしょうか。今でも疑問が残ります。
選挙前、SNSには外国人批判の投稿が急増しました。「日本人の税金が多く使われ、外国人は優遇されている」「高級タワマンを買い漁っている」「大声で騒ぐなどマナーが悪い」「治安が悪くなる」等々。
確かに、昨年の在留外国人数(2024年末、376万8977人=出入国在留管理庁)、インバウンドの訪日外国人数(2024年、3686万9900人=政府観光局)が過去最多を記録したこともあり、こうした傾向が目につくのかもしれません。
SNSの事例は具体的な数字や根拠が少ないのでファクトチェックできませんが、最近になって外国人犯罪、マナーの悪い外国人が急増したのでしょうか。日本人犯罪も毎日発生し、マナーの悪い日本人はどこにでもいます。
近年、欧米でも極右勢力を中心に外国人排斥の動きが強まっています。ただ難民が殺到するヨーロッパ、不法移民が国境を越えて流入するアメリカと比べ、日本は問題の質が少し違うようにも思えます。それでも今回の参院選挙では、「自国第1主義」を掲げ、外国人批判を強める保守勢力が支持を伸ばしました。
洋の東西を問わず、いつの時代でも、社会不安、不満が高まると、陰謀論などが飛び出し、外国人が攻撃対象となるのは、よくあることです。権力者にとっては大衆の怒りの矛先をかわし、逆に支持を伸ばすための常套手段です。
いま、若い世代を中心に不安、不満が広がる日本。「外国人非難が増えている」のを知った一部の保守勢力が、支持を拡大するための戦術として外国人問題を巧みに利用した、というのは、考え過ぎでしょうか。
参院選挙は終わりました。争点となった外国人問題ですから、これからは具体的な政策論議に期待しましょう。でも、それが一方的な「外国人排斥」だけの論議になるならば、川上村などで真面目に働く外国人は救われませんね。
ソスペーゾ多摩は「不偏不党」、政治に関知しない小さなフードバンク団体ですが、外国人問題だけは注意深く見守っています。その理由はいずれまた。 (有道)