2025/11/30

「栗ぜんざい」に万歳!

  「子どもたちにどうぞ」。東京の有名菓子製造会社が和菓子の「栗ぜんざい」を大量に寄贈してくれました。今年8月の「フルーツゼリーと葛(くず)菓子」に次ぐ第2弾。今回も、やむを得ない事情で販売キャンセルとなった商品ということです。

 餡(あん)の中に大粒の栗が丸ごと1個入り、小豆の風味とともに味わう本格的な「栗ぜんざい」。このような高級菓子はめったに口にすることがないので、子どもたちより先にフードバンクの私たちの方が恐縮してしまいます。

 栗ぜんざいは、そのままお菓子として食べて、栗の美味しさを味わうのはもちろんですが、白玉団子、お餅とともに「お汁粉」でも美味しく食べられますね。

 60個入りが計240箱。ソスペーゾ多摩のメンバー5人がマイカーで出掛け、東京・八王子の同社工場で受け取りました。同社の佐藤常務が先頭に立って積み込みを手伝ってくれるなど、皆さんの温かいご支援に感謝するばかりです。

 早速、子どもたちに届けました.。思いもかけず飛び込んだプレゼント。「わあ、フードバンクから、こんなものまでもらえるんだ」と皆さん、珍しい和菓子を見てびっくりしていました。

 本当にありがとうございました。     (有道) 

 


2025/11/23

まだまだ続く熊の脅威

  前回に続き、「熊の出没被害」について考えます。

 熊は冬眠する動物、冬になれば出没は減るのでしょうか。答えは「NO」です。

 研究者によると、近年は冬眠しない「穴持たず」の熊が増えているそうです。冬でも人里に食べ物があるので「冬眠の必要なし」ということです。となると、12月以降も各地でクマが人を襲う恐れは十分あり、まだ警戒が必要です。

 「穴持たず」は攻撃力が高く危険。前回取り上げた大正4年(1915年)12月、北海道苫前町で起きた「三毛別羆事件」の羆も「穴持たず」と言われています。

 熊被害がなぜ多発するのでしょうか。既にニュース解説や研究者の報告で数多く指摘されていますが、素人ながらに要因をまとめてみました。

 直接要因として、研究者らが指摘するのは「熊の主食のブナなどドングリ類の凶作」です。次に中長期的要因として鳥獣保護政策と狩猟者減少による熊の個体数の増加、里山の荒廃、都市開発による住宅地の拡大など人間生活圏の変化——が挙げられます。

 それでも、「なぜ熊は人を襲うまで狂暴化したのか」という疑問が残ります。「エサ不足で飢餓状態にあるから狂暴になる」など諸説ありますが、いまひとつ、はっきりしないのです。 今秋は人間が複数で行動していても襲われ、あるいは最初から意図的に人を狙って攻撃する事例も発生。「特定の個体の特異な行動なのか」「熊に人間への警戒心がなくなっているのか」、よく分かりません。

 2019-23年に北海道東部で、「OSO18」というコードネーム(発生場所の標茶町オソツベツ、幅18cmの前足跡から命名)を持つ羆に放牧牛66頭が襲われ、酪農家を震撼させる事件が起きました。テレビなどで報道されたので、ご存じの方も多いはず。「OSO18」は警戒心が強く、罠にも掛かからず、4年近くも追跡をかわしながら「犯行」を重ね、最後は地元ハンターに偶然仕留められました。

 この時、言われたのは、この個体は増え続けるエゾシカの死骸を食べて食肉の味を憶え、牛の襲撃を繰り返したのではないか、ということです。

 本州でも近年、増え続ける鹿や小動物をエサとして捕食、肉食の味を知った熊が増えた、との指摘があります。加えて中長期要因①で指摘される「狩猟者の減少」があります。「狩り」で人間に殺されることが減り、人間への警戒心を持たない熊が増えたのではないか、ということです。人間を襲う「狂暴化」の理由として、これが一番妥当な答えかと思います。

 熊の被害急増が一挙に社会問題となったことで、政府、自治体も対応に追われました。自治体首長の判断で市街地でも猟銃を発砲できる「緊急銃猟」の制度もつくられ、熊の捕獲、駆除が強化されています

 熊の駆除に自衛隊の出動まで求める声も出ました。自衛隊の武器は当然ながら「人間相手の戦闘」に使用するものなので、熊相手は法律的にも難しく、結局は後方支援だけです。 

 そこで「人の命と安全を守る」警察の出番となりました。警察庁の動きは素早く、特殊銃(ライフル銃)を熊の駆除にも拡大できるよう国家公安委員会規則を改正、関東の銃器対策部隊が被害地域に派遣されました。

 東北の地元では応援部隊を歓迎していますが、地元ハンターからは心配の声も上がっています。「住宅街の広いところで、うろつく熊には対応できるが、物陰から急に飛び出す、または猛スピードで向かって来る熊にはとても対応できない。経験がないと無理」ということです。

 「警察のライフル部隊はハイジャックなど凶悪犯を制圧する訓練は受けていても、素早い動きの動物を射殺するのは慣れていない。撃ち損じでもすれば、社会的な批判も大きい。リスクの多い任務です」(元警察幹部)との指摘もあります。

 警察の応援部隊がいつまでも現地に常駐できるかも分からず、警察や地元ハンターによる駆除作戦は、人身被害を食い止めるための緊急避難的な措置。いずれ、「生息個体数の見直し」をせざるを得ず、結局は専門のハンターを急いで育成することが必要でしょう。

 熊被害の急増は、これまで指摘したように、過疎化などで日本人の社会生活、土地利用などが変化、また気候変動など自然環境が変化するなど様々な要因が絡み合って起きていると言えます。

 要するに地方で人々の営みが縮小、山や農地が荒れてしまったのです。木こり(木の伐採)やマタギ(狩猟者)も今や職業として存在しない時代。そこに鳥獣保護政策も加わり、山や市街地で、野生動物が「我が物顔」に動き回る状況になったのですね。

 森林、里山など自然環境を元に戻すのはもはや不可能です。でも、このまま放置すれば、熊が「野良犬」のように、街中を日常的にうろつくことになります。どうすればよいのか。熊の出没問題は、日本の地方が抱える多くの問題を私たちに突き付けているのかもしれません。「国家レベル」での長期的な取り組みが必要だと思います。   (有道)

 


2025/11/16

「熊に襲われる」という恐怖

 各地で熊の被害が止まりません。

 北海道や東北、長野に住む親類、知人から私のところにも「大変なことになっています。」とのメールや便りが届きます。山間部ばかりか、市街地の公園、学校などにも出没するので「散歩もできない」「子どもが心配」「怖くて外出はすべて車」というのもよく分かります。

 環境省によると、今年、全国の熊出没は2万792件、死者13人(4-9月、速報値)で過去最高を記録しました。都会に住んでいると、なかなか実感が沸きませんが、まさに異常事態です。

 日本で今、誰もが恐れる「脅威」と言えば「地震」「大雨災害」「感染症」でしょうか。

 熊の出没はこうした「脅威」とは違うかもしれませんが、「動物に襲われる」という恐ろしさは特別なものがあります。身近に共存してきた生き物に「人間が食われる」という恐怖です。スティーヴン・スピルバーグ監督の「ジョーズ」やアルフレッド・ヒッチコック監督の「鳥」など、生き物が人間を襲う「動物パニック映画」には名作が多いのです。

 欧米では、人間の生活を脅かすオオカミが長く恐怖の対象でした。「赤ずきんちゃん」など童話にはオオカミがよく登場しますよね。

 日本には熊を除くと、アフリカやアジア地域で見られるライオン、虎、象といった猛獣は生息せず、暴走する鹿や猪、マムシやハチに運悪く襲われる死亡事故が起きるぐらいです。だから、今年の熊被害の多発は、日本人には初めての「恐怖体験」なのかもしれません。

 北海道の日本海沿い、苫前町の郷土資料館を訪ねたことがあります。玄関を入ってすぐ、牙をむいた巨大な羆〈ヒグマ)の剥製が待ち受け、「うわあーっ」と思わず後ずさりするほどです。「渓谷の次郎」と呼ばれる伝説の巨大羆で、「昭和66年、同町三渓で捕獲、体重350kg、雄」とあります。

 ここ苫前町は、大正4年(1915年)12月、三毛別(みけべつ)地区の開拓農家を羆が襲う「三毛別羆事件」が起きたところです。1頭の羆が何軒もの家々を繰り返し襲い、犠牲者の通夜の場にも窓を打ち破り舞い戻って来るなど、まれにみる悲惨な事件。幼児を含む7人が殺され3人が重症、「日本獣害史上最大の悲劇」ともいわれます。

 吉村昭の小説「羆嵐(くまあらし)」は、その恐怖を生々しく描いています。資料館には、農家が羆に襲われる状況をリアルに再現した展示や、別の羆「北海太郎」(体重500kg、日本最大級)の剥製もあって、まるで「恐怖の館」です。それだけ、羆は地元の人々から長く恐れられて来た存在なのでしょう。

 北海道の羆被害と言えば、もうひとつ、忘れられないのが1970年に日高山脈で福岡大学ワンダーフォーゲル部の学生が登山の最中に羆に追いかけられ3人が死亡した事件です。

 今でも、犠牲となった若い学生が気の毒で、詳細は語りたくありませんが、「羆に奪われたリュックを学生が取り返しに行ったために襲われた」との報告もあり、当時、地元では「本州の人は羆の恐ろしさを知らない」との声が出たことを憶えています。

 子どもの頃、実家の知り合いに営林署関係者がいて、羆に襲われた人の悲惨な状況について聞かされました。学生時代は勉強もせず山ばかり登っていましたが、遠くに羆の姿を目撃したことは何度かあっても、実際に遭遇したことはありませんでした。たまたま運が良かっただけなのでしょう。一度、ホヤホヤの大量の糞と大きな足跡を見つけ、その時は登山を中止、急いで下山したことがあります。

 常に羆を警戒していたことは確かで、羆の生態について勉強会を開いたこともありました。

 以前の北海道では、皆が羆の恐ろしさを共有していたはずですが、都市開発とともに忘れ去られたようです。

 苫前熊事件をまとめた同資料館の冊子(昭和55年)は「最近はヒグマブームだが、その被害が軽視されがちである。要するに羆を愛嬌ある動物という概念を(人々に)与えないことが大事である。野生のヒグマは動物園のクマと全く違う。北海道の自然環境やヒグマの本性から察して、今後また惨事が起こる可能性は十分にある」(犬飼哲夫北海道大学名誉教授)と、早くから警告を発しています。

 今年も、知床で羆に接近して写真を撮影する人、エサを与える観光客の姿が報道されていますが、私には理解不能です。

 ふつうの人以上に熊の恐ろしさを意識していても、今年の各地での熊被害の多発はショックです。ここ数年、楽しみにしている奥多摩、山梨方面の登山は春先からすべて中止しています。案の定、8月には東京都内の奥多摩で渓流釣りに行った人が熊に襲われました。

 私たちはフードバンク活動の傍ら、日本の「食」や気候変動についても考えています。生態系の問題にまで視点を広げてみれば、熊問題は避けて通れない関心事です。

 熊が出没する背景、今後の対策などについては、次回以降に続けます。 (有道)