2026/08/09

夏の夜を彩る花火

 日本の「夏の風物詩」と言えば、何といっても「花火」でしょう。

 盛夏の8月、「ドドーン、ドーン」と大きな音を響かせ、華やかな大輪の花を夜空に咲かせる打ち上げ花火。各地で開催される花火大会は人々を魅了します。

 花火大会もいいけど、自宅の庭先で楽しむ花火(注1)も楽しい。シューッ、パチパチと燃える音。暗闇の中にまぶしく輝く光。モクモクと上がる煙の臭い。花火は幼いころの遠い記憶を呼び起こしてくれます。

 夏になると雑貨店やスーパーなどの店先に花火セットが並びます。子どもが花火が大好きなのは今も昔も同じ。定番の「手持ち花火」に始まって「噴水型」、「打ち上げ(ロケット花火)」など様々あります。私が子どもころは、地面を激しく回転して走り回る「ネズミ花火」、火をつけると黒い灰がヘビのようにニョロニョロと伸びていく「スネーク花火」が人気でしたね。最近はあまり見掛けませんが、もうつくっていないのかな。

 私が好きなのは「線香花火」。時代は変わっても形を変えることなく、多くの人をひきつけ、根強い人気があります。火をつけると、小さな火の玉がふくらんで、火花が勢いよく飛び散ったかと思うと、小さく細い光が飛び散り、最後に赤い球がぽとりと落ちて消える‥‥。

 「あーあ、終わった」。わずか数十秒という短い時間。一瞬に輝いた美しさの後に、静寂と消滅を迎えるので、線香花火を「人生のはかなさ」に例えることも多いようです。皆が皆、線香花火で「人生のはかなさ」を感じるわけではありません。ただ、私が子どものころも、線香花火は最後にやるものと何となく決まっていて、線香花火が燃えるのを見て誰もが黙ってしまうのを憶えています。こども心に何かしらの「寂しさ」を感じたのでしょうか。

 線香花火は江戸時代前期に子どもの「玩具」としてつくられたそうです。稲わらなどの先に火薬をつけて香炉などに立てて遊んだといいます。その姿が仏壇の線香に似ているので「線香花火」の名前がついたとか。ただの「おもちゃ」でしかなかったものが、庶民の間で広く親しまれるうちに、その「燃え方」を見て大人が「人生のはかなさ」と形容したのでしょう。

 「人生のはかなさ」は「この世はすべて移ろい変化し、永遠にとどまることはない」という仏教の「諸行無常」の真理ともつながります。花火には、先祖の霊を導くお盆の「迎え火」や「送り火」と重なるものがあるのでしょうか。

 ずっと前のことですが、日本に住むアジア、欧州からの外国人との間で「線香花火(Senkouhanabi )って知っている?」と話題になったことがあります。外国には、もちろん「線香花火」なるものは存在しないし、「花火を見て『はかなさ』を感じるのは日本人だけ。でも、そういうとらえ方は理解できる」と答えたフランス人女性は、異文化が分かる人でした。

 私たちフードバンクが支援する子どもたちは今、夏休みの真っ最中。もちろん、「人生のはかなさ」など、今から感じるのは早すぎです。線香花火よりも、派手な花火を元気よく打ち上げ、真夏の夜を思いっきり楽しんでくださいね。   (有道)

(注1)外国ではフェスティバルや記念日に打ち上げる豪快な花火が主流。日本のように公園や家庭で手持ち花火を楽しむ文化はほとんどない。もともと火薬類に対する取り締まりが厳しく、花火は安全上の理由から「違法」「許可制」とする国も多い。日本も「防火」「騒音」などの理由で、最近は家庭花火も場所が制限されるところが増えている。

📸 火花を散らす線香花火