2025/09/21

初めて見るタアサイ

 「今日は何があるかな?」子どもたちは、毎週届く食品を楽しみに待ちます。

 私たちが配る支援物資は、ほとんど企業、団体、農家や個人の方々から無償で寄贈されるものです。当然のことながら、こちらからほしいものを注文などできないし、スーパーで選り取り見取り、好きなものを買うようなわけにはいきません。

「先方の都合」に左右されるのは仕方ないことです。それがフードバンクです。

 でも、その分、好物の食品が届いた時の喜びは格別です。それまで買ったことのない食品、初めて見る食品もあります。フードバンクならではの「お楽しみ」ですね。

 寄贈いただく食品は必ずしも「余剰品」ばかりではありません。

 高騰するお米を寄贈してくださる方もいます。青果問屋さんから時には、高級メロンやシャインマスカット、パイナップルなども。先日は立派な大玉スイカが1個、転がり込んできました。

 大量のゼリー菓子の寄付もありました。私たちボランティアも口にできない高級菓子。子どもたちが大はしゃぎする気持ちがよく分かります。

 フードバンクは食品安全管理の理由で肉、魚、乳製品(一部冷凍品を除く)は取り扱いできませんが、その他の食品は、賞味期限さえ満たしていれば、お酒を除きほぼ何でも受けます。

 ですから、実に多種多様なものが集まります。特に個人家庭で食べない食品を持ち寄るフードドライブの品々は、見ていても飽きないくらいです。

 ラーメン、カレーなど人気商品のほかに、時折、高級品が届き、私たちを驚かせます。高級銘茶、化粧箱入り麺類、カニ缶、輸入チョコレート菓子、外国産はちみつ、カナダ産メープルシロップetc

 滅多にありませんが、日本では珍しい輸入食材も見ます。陳皮(チンピー、中国産、みかんの皮を干したもの)、鎮江香酢(中国江蘇省鎮江市を産地とする黒酢)、ベトナム製バンチャン(ライスペーパー)、ブラジル産フェイジョン(肉煮込み料理に使う黒いんげん豆)などもありました。もらったけれど食べ方が分からず、フードドライブに持ち込んだのでしょうか。

 ある時、葉先がちりめん状に縮れた大ぶりの葉物野菜が届きました。「珍しいね。見たことある?」。中国での駐在経験が長いメンバーの一人が「中華料理でよく使うタアサイではないか」と教えてくれたこともあります。

 「タアサイ」とまで行かなくても、若いお母さん方にはなじみが少ない山芋、泥付き里芋、レンコン、サツマイモ、瓜(ウリ)なども入荷します。山芋は長さ30cmほどの立派なものもあって、「お年寄りが食べる物と思っていたけど、ソスペーゾ多摩からもらって初めて食べたら美味しかった」というお母さんもいました。

 稲城市の「もみの木保育園子ども食堂」の田中逸美さんは「子どもが野菜を食べるようになった」というお母さんの話を紹介しています。

 多摩市聖ヶ丘の子ども食堂「ほくの家」では、見慣れない食品を受けた時は、お母さん方がお互いにSNSでレシピを紹介、人参など大量に配布されたときも、スープや炒め物などレシピをひと工夫して「できるだけ残さないようにしている」とのことです。

 手軽に食べられるということで、「インスタント食品、カップラーメン、レトルトカレー」の食事も助かりますが、いろいろな食材を使って、少しでも「食」の幅を広げてもらえれば私たちも嬉しいです。

「ほくの家」を主宰する荒井永理さんは「食品をお互いに融通し合ったり、レシピ交換などを通じて、お母さん方に横のつながりができることが大事」と話します。

 特にひとり親家庭のお母さん方は、仕事と子育ての両方で忙しく、孤立感を持つ人も少なくないと聞きます。フードバンクからの支援を受けても現状の困難な生活を改善できず、思ったように行かない人もいるでしょう。

  人は、心配なく食べることができて初めて、心に余裕ができる、と言われます。 「食の支援活動」が物的支援だけでなく、結果として精神的支援でもお役に立てれば、と思っています。  (有道)

📷タアサイ(搨菜):冬が旬の中国野菜。白菜や青梗菜(チンゲン菜)の仲間で炒め物やスープ、和え物などさまざまな料理に使える。日本では主に東日本で生産されているが、「まだ広く知られていない」 (市場関係者)