2025/10/26

秋深まり「石狩鍋」

  「木々もすっかり色づき、北国からは初雪の便りも届く季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか」 

 メール時代の今、こうした「時候の挨拶」など目にすることも少なくなりましたが、この時期、どなたかに手紙をしたためるとすれば、こんな書き出しになるのでしょうね。

 猛暑が去って、私たちフードバンクの作業も楽になりました。でも、徐々に冷え込みも強まり、今年の秋は間もなく終わりそうな気配です。「食欲の秋」「読書の秋」「芸術の秋」「スポーツの秋」などと言われますが、この調子だと、秋をゆっくり楽しんでいる時間もなさそうです。

 前に、このコラムで「日本の四季」について触れた際に、書き残したことがあり、もう少し「季節談義」を続けることにします。

 「日本人はどの季節が一番好きなのか」という話です。

 これについては、以前から種々の調査が行われています。その中でNHK放送文化研究所が行ったものを紹介しましょう。2007年のかなり古い調査ですが、今でも参考になります。全国300地点、16歳以上の国民3600人(有効回答率66.5%)を対象とした大掛かりなものです。

 調査結果(複数回答)を簡単に引用すると、男女全体では、春が69%と一番人気。次いで秋が55%、夏は30%とかなり落ち、冬が13%と最低の数字でした。男女差、北国と南国など地域によっても傾向が異なる部分はありますが、全体を通して見ると、やはり日本人は暑い夏、寒い冬よりも、気候の穏やかな春と秋を好む傾向が強いようです。

 月別では、年齢層によって少し異なり、若年層は男性の1位=4月と8月(同率)、女性の1位=8月、2位=12月。高齢層は男女とも4月と10月が1~2位を占める結果が出ています。若年層は入学、就職で新しい人生のスタートを切る希望の春、そして夏休みの8月を楽しみにするのでしょう。

 女性若年層の12月人気はパーティー相次ぐクリスマスシーズンだからでしょうか。高齢層の4月人気は、寒い冬が終わり、温かい春を迎える喜びが反映されているのかと思います。

 日本人の「好きな季節ランキング調査」はこのほかにも、各企業などが多数実施していますが、最近10年の全体傾向を見ると、若年層でも過去に1番に挙げていた夏の人気が3位または4位に後退。若者もさすがに、昨今の異常な暑さにうんざりしていることが読み取れます。

 面白かったのが、「令和の現役高校生に聞いた」とする調査(株式会社ワカモノリサーチ、今年6月実施)。全国478人にネットで聞いたそうですが、ここでの一番人気は冬(34.7%)です。

 その理由で一番多いのが男女問わず、「虫がいないから」

 にわかに信じがたいような結果で、これには驚きました。「虫博士」で知られる養老孟司先生が聞いたら腰を抜かすかもしれませんね。

 日本人の季節に対する好感度指数も「人によって、地域によって、また時代や気候変動によって、変わるものだ」とよく分かります。皆さんはどうでしょうか。

 私の場合は北国育ちなので、長い冬の後にやって来る春も待ち遠しかったのですが、一番好きな季節と言えば、やはり食べ物が美味しい「収穫の秋」です。

 かつて、北海道・大雪山の山中の工事現場で働いたことがあり、ここで食べた「石狩鍋」の美味かったこと、今でも忘れません。当時は今より寒かったので、北海道の山奥で10月と言えば雪が舞う初冬の季節。飯場(作業員小屋)での夕飯でした。

 音を立てて燃える薪ストーブに大鍋をかけ、昆布だしに、大根、キャベツ、ジャガイモ、シイタケなどの野菜をバサバサ入れ、続いてブツ切りにした生ジャケ(鮭)丸ごと1尾を頭、尾のアラも一緒に放り込み、煮立ったら最後に、味噌と酒で味付け、豆腐、長ネギを加えます。熱々をフーフーしながら食べるのです。

 「これ、うまいべ、ほれ、もっと食えや」。オヤジさんたちが勧めてくれ、お酒の酔いも回り、これまで食べた料理の中で「最高のぜいたく」でした。

 毎年、秋になると、この大雪山での食事のことを懐かしく思い出しますが、今は生鮭もいい値段で、「石狩鍋」もおいそれと出来なくなりました。第一に、山奥でこんなことやっていたら、羆(ヒグマ)が出て来ます。

 11月は鮭が生まれた川に遡上する季節です。しかし、近年の海水温上昇の影響を受けて、放流した鮭が北海道などへ帰って来る数は最盛期の半分以下に減っている、との報告があります。

 日本産の鮭を食べられない時代が来るかもしれません。これは深刻です。 (有道)

 


2025/10/19

お弁当が楽しみ

   フードバンクが配る食品は子どもたちの口にどのように届くのか。現場の様子が知りたくなり、支援先の施設をお訪ねしました。

 東京都稲城市矢野口の松葉保育園。多摩川に近い住宅街に建つ同保育園は、周囲に緑地も多く、恵まれた環境にあります。園児140人。施設も充実して、地域では人気の保育園として知られています。

 保育事業の傍ら、地域貢献の一環として続けているのが子ども食堂です。毎月1度、15世帯に計30食の食事を提供。ささまざまな理由で食事を必要とする母子、父子家庭らが対象です。

 ここではスペースの問題もあって、子どもたちが集まる食堂形式ではなく、今はお弁当を提供しています。 保育園まで取りに来られない人たちには、園長や地元の民生委員らが手分けして配達。地域貢献のため、支援対象者には高齢者も一部含まれますが、民生委員の推薦で「食事の助けがどうしても必要な人」に限定し、支援対象を無制限とする「誰でも方式」はとっていないとのことです。

 子ども食堂のほかに毎週、食品配布(パントリー)も開催、私たちが届ける野菜、果物などの食材、お菓子などを20家庭ほどに渡しています。伸び盛りの子どもがいる世帯を中心に、こちらも喜ばれているそうです。

 キッチンをのぞくと、ちょうど4人ほどの調理スタッフがお弁当の盛り付けの真っ最中でした。献立は次の通り。

  ・きのこご飯(しめじ、まいたけ、鶏肉、油揚げ、あさつき)

  ・鮭の海苔から揚げ(鮭、青のり)      

  ・サラダ(サニーレタス、プチトマト)

  ・ひじき煮物(ひじき、人参、いんげん)  

  ・おさつバター(さつま芋、バター)

  私も試食させていただきましたが、これがまた美味しいのですね。季節を感じさせる「きのこご飯」に、鮭のから揚げや、ひじきの煮物などが並び、見た目も豪華。同保育園のキッチンで専門スタッフがメニューを考え、調理するので、母さんや子どもたちには大変な人気だとか。

 ソスペーゾ多摩が届けた野菜や果物を上手に調理、利用しているのが分かり、嬉しい気持ちになりました。「特に人参など根菜類、トマト、それと豊富な果物はとても助かっています」(スッタッフの話)

 同保育園のお弁当支援について、富岡純子園長は「皆で一緒に食事をする食堂はお母さん方や子どもたちの交流の場にもなる」と、その効果を認めつつ、一方で「お弁当は各家庭を訪問し、母子たちと直接話ができるなど見守り効果もあります」と話しています。

 キッチンで調理スタッフの方々が忙しく立ち働いているのを見て、「保育園児に食事を用意する本来の仕事のほかに、子ども食堂の30食のお弁当を用意するのは大変なことだ」と思いました。「月に1度が精いっぱい」という富岡園長の説明も分かります。

 同保育園の子ども食堂は、調理設備、スタッフなどかなり恵まれている方だと思いますが、やはり園長はじめスタッフ全員の子ども支援に対する熱意を強く感じました。

 最後に、保育園にお弁当を取りに来た母子にお会いしました。お弁当とゼリーの入ったお菓子の袋を嬉しそうに抱えて帰る女の子の笑顔が印象的でした。  (有道)



2025/10/12

四季が消えていく

  朝晩、涼しさが増し、秋の訪れを感じます。耐えがたい猛暑が続いたので「この夏は終わりがないのか」と思ったほどですが、さすがに、その暑さも和らぎ、ほっと一息です。

 フードバンクで野菜や果物を配っていると、「四季の変化」を身近に感じるようになります。7月に入ると、キュウリやナス、トマト、トウモロコシなど夏野菜が増え始め、続いて桃の大量入荷。その後、梨や柿のシーズンを迎えます。秋にはぶどう、りんご、サツマイモ、栗も。11月から子どもたちに人気の「みかん」が増えてくると、冬の季節到来です。農作物は収穫時期とともに季節ごとのサイクルで回っているんだなあ、とつくづく思います。

 「日本には美しい四季がある」と言います。

 調べてみると、日本だけでなく海外にも四季のある国々が存在することが分かります。欧州や米国北部、カナダ、南半球ではニュージーランドなど中緯度の温帯地域です。春・夏・秋・冬の四つの季節に分かれ、それぞれ季節ごとの美しい風景が広がり、豊かな食や文化に恵まれます。特に北イタリアから東欧にかけての地域で見る秋の紅葉、その美しさには圧倒されます。

 ただ、欧米温帯地域の気候はマイルド(温暖)なせいか、四季の違いが線で引いたようにはっきりしていないような気がします。日本は山と海に囲まれた島国で、寒暖差も激しいので「春夏秋冬」が、くっきり分かれ、しかも、ほぼ3か月の等間隔で順序よく移り変わっていきます。日本人特有とも言える繊細な季節感覚は、この独特の気候風土があるからでしょう。

 日本の四季の移ろいは、古代以来、衣食住をはじめ、俳句、和歌などの文学、音楽、美術など生活・文化を発展させてきました。日本人はずっと、四つの季節のリズムに合わせて生活してきたのですね。日本の稲作が季節ごとに作業が分かれ綿密な手順を必要とするので、日本人の真面目で几帳面な国民性が養われた、という説を聞いたことがあります。

 いま、この四季が崩れつつあります。

 猛暑の夏が5月から10月まで半年近くも続くために、気温だけ見ると、快適な春と秋は「束の間」で終わり、日本の一年は夏と冬だけの「二季」と言う人もいます。

 今年の秋もどれほど長く続くか分かりません。いずれにしろ、こうした傾向はここ2、3年で急速に強まったのではないでしょうか。私たちも「季節の移ろいを感じる」と悠長なことを言えたのは昨年まで。今年は季節の品々が例年のように届かなかったり、数量が減ったものもありました。猛暑のせいです。

 四季がなくなるなんて想像したくありませんね。でも地球温暖化が止まらない限り、本来の「日本の四季」が復活することは、もうないと思います。日本人が慣れ親しんできた「旬の味」など、言葉だけのものになるでしょう。

 考えてみると、日本人は便利な生活を追い求める一方で、四季がもたらす楽しみを自ら捨て去って来たのかもしれません。ビニールハウスなど施設栽培の発達と産地リレー、工場での農業生産も増え、水産物を含め海外産の輸入拡大。今は季節に関係なく「旬の味」が手に入ります。

 「グローバル化でモノが国境を越えて動く時代なのに、四季だの、旬だの、関係ないよね」と若い世代から笑われそうです。「食」ばかりか、季節のお祭りも「世話役がいない、神輿(みこし)の担ぎ手がいない」など、存続に苦労しているところが多いと聞きます。

 日本人にとって季節ごとの楽しみは、かけがえのないものです。これからは「四季の喜び」を知らない世代が徐々に増えていくでしょう。50年後、いや10年後の日本の生活文化はどう変わっているのでしょうか。

 子どもに読み聞かす「日本昔ばなし」も書き換えが必要かもしれません。

「むかし、むかし、あるところに、みんなが四季を楽しみ、幸せに暮らす時代があったとさ」 

  (有道)



 

2025/10/05

ワッフルは「即日完配」

  すぐ近くのケーキ屋さんから、たくさんの焼き菓子ワッフルを寄贈いただきました。

「注文がキャンセルになった商品があるけど、子どもたちに配ってもらえますか」と連絡をくれたのは東京・八王子にあるシャトレーゼ京王堀之内店。

 毎年12月のクリスマスシーズンに、ソスペーゾ多摩に特製Xマスケーキを製造、子ども支援を続けているケーキ店です。

 同店のワッフルは生地がしっとり、もちもち感があり、味もほんのりと優しい甘さで、「地域では評判の品」(鳥潟徹也店長)です。フードバンクに洋生菓子が寄贈されることは少ないので、とても嬉しく受け取りました。

 できるだけ早く届けないといけないので「どうしようか」と考えていたところ、当日は配布先に、たまたまお母さん方が集まっていたところもあって、すんなり渡すことができました。全部で40世帯余り、「即日完売」ならぬ「即日完配」。「わあ、サプライズ !」と皆さん、大喜びでした。

 本当にいつもありがとうございます。  (有道)

 


📸 ワッフル:格子状の蜂の巣模様が特徴。小麦粉、卵、牛乳、砂糖、バターなどを混ぜ合わせ、イースト菌で発酵させた生地を、型に挟んで焼き上げた菓子。オランダ語で蜂の巣を意味する「Wafel」(ヴァーフル)が名前の由来。日本には明治時代、ヨーロッパで洋菓子を学んだ日本人が紹介、柏餅風のサンドタイプ(クリームやジャムなどを挟む)が長く親しまれていたが、1990年代後半に、ベルギーワッフルブームが起こり、現在の形が主流に。ワッフルメーカーも販売されている。

2025/10/02

ケーキの味は苦かった

  自民党総裁選に出馬した候補の一人が「子ども食堂」を訪れ、そこでの視察をめぐってSNS上などで非難が集中、近隣の食堂関係者の間でちょっとした話題になりました。

 一部報道やネット情報などによると、この候補が訪れたのは東京都内のA子ども食堂。自身が公約に掲げる生活支援対策をアピールするための視察で、施設運営者と意見交換した上で、子どもたちと遊ぶ、カレーライスを食べるなど交流を図り、その後のサプライズで、同候補の誕生日会を開いてもらった、というものです。

 同候補は視察後、X(旧ツイッター)で「幼児教育の無償化など様々な政策を実現してきましたが、まだまだ足りていないことも多いことを痛感」と視察の成果を強調、今後、子ども政策に取り組む意欲を示しています。

 ところが、子どもたちがバースデーソングを歌う中、同候補が誕生ケーキのローソクを吹き消す動画がSNS上で拡散すると、ネット上には非難の声が集中しました。

 「子ども食堂に行くならどっさり食べ物持っていくのが筋じゃないのか」 

「普段ケーキなんか食べられない子どもたちに、こんな事をさせて恥ずかしくないのか」

「なぜ子ども食堂があるのか。それは政治がおかしいからではないか」

などの投稿が相次ぎました。

 一部に「現場を視察するのは政治家の大事な仕事」と擁護する書き込みもありましたが、大半は批判的な内容です。

 SNSへの投稿は感情的にエスカレートしたり、無責任な内容も多いので、割り引いて考える必要があります。それでも、この問題がここまで炎上したのは「貧困問題を解決できない政治」に対する社会の怒りの表れでしょう。「子ども食堂やフードバンクが必要ない社会にしてほしい」と誰もが思っています。

 他の候補と同じように地方の農家や工場を視察し、そこでケーキをご馳走になっても、こんなことは起きなかったはず。なぜ、同候補の「子ども食堂」訪問だけが、非難されるのでしょうか。

 恐らく、同候補の個人的なイメージに因るところが大きいと思われます。かねてから「エリート意識が高く、自分が一番優秀だと思い込み、役人をよく叱りつける人」(政界関係者)と言われています。

 常に「強者」の論理を振りかざし、「子ども対策」とは無縁のようなイメージの人が、突然、子ども食堂で愛嬌をふりまいても、相手は「ドン引き」ですよね。

 投稿の中には「政治家の訪問が子ども食堂のボランティア現場に与える負担」を指摘する声もありました。

 今回のA子ども食堂はどうだったのでしょうか。同候補の推薦人に名を連ねる地元選出代議士がこの食堂を紹介したのか、または、周辺の誰かが同候補の支持者だったのか、事情はよく分かりません。

 子ども食堂やフードバンクは多くの人々の善意に支えられています。「子ども支援」という社会問題に常に向き合っているため、政治動向にも左右されます。行政との連携は不可欠ですが、国会、地方議員ら政治家の理解、協力、支援も求めるでしょう。

 ただ、特定の政党、政治家との距離が近すぎると、自分たちの独立性を失う恐れがあります。ボランティア団体としての「自主性」は大切にしたいです。

 ソスペーゾ多摩は地域の小規模フードバンク組織でもあり、今回のような騒動に巻き込まれたことはまだありませんが、今後も不偏不党を維持しながら、地道な活動を続けていくつもりです。

 今回、子ども食堂に突然現れた「どこの誰だか知らないおじさん」の誕生日を祝い、バースデーソングを歌った(歌わせられた?)子どもたちは何を思ったのでしょうか。大人が子どもを政治利用するのは、考えものですね。   (有道)

📸写真は本文の子ども食堂とは関係ありません。