2026/04/19

エンゲル係数

  私たちの生活の豊かさを測る指標の一つに「エンゲル係数」があります。

 「消費支出全体に占める食費の割合」のことです。数値が高いほど「食べることに追われて余裕がない状態」、すなわち「生活が厳しい」ということになります。確か、中学校の社会の時間に習うはずですが、私の場合はテストの前に丸暗記しただけで、深い意味も知らずにずっと忘れていました。

 この「エンゲル係数」が今また関心を集めています。

 今年2月に発表された総務省家計調査によると、2人以上世帯のエンゲル係数が2025年は28.6%となり、1981年(28.8%)以来、44年ぶりに高水準を記録したからです。前年の2024年(28.3%)と比べてみても、0.3ポイント上昇しました。

 日本全体が食糧難にあった終戦直後の1946年、66.4%にも達した我が国のエンゲル係数(注1)は戦後の復興、高度経済成長による所得水準の向上で徐々に低下しましたが、2005年(平成17年)の22.9%を底に上昇に転じ、ここ10年ほどはじわじわと上昇を続けているのです。

 近年のエンゲル係数上昇の背景には、個人所得の伸び悩みと食料品価格の上昇があります。気候変動による異常気象に加えて、ウクライナ戦争に続く今回の米国・イスラエルによるイラン攻撃で国際経済が大混乱。原料価格の高騰や円安の進行で、生鮮食品をはじめとする日本国内の食品価格は大幅に上昇し、物価全体の伸びを大きく上回る状況です。

 データを見ても、2025年の消費者物価(総合)は前年比+3.2%と大幅に上昇しましたが、内訳をみると、食料品以外の部分では同+1.7%であるのに対して、食料品の上昇率は+6.8%で、食料品値上げがいかに大きいか、よく分かります。

 毎日、スーパーへ買い物に行くと、相次ぐ食品の値上げにため息が出ます。できるだけ安い商品へシフトするなど消費者は生活防衛を図っていますが、生きていくために必要な食料品は節約が難しく、食べ盛りの子供を抱える家庭では支出の抑制にも限度があります。結果として食料品への支出割合が増加、エンゲル係数の上昇が続くというわけです。

 年間収入別(2025年)にみると、収入が最も多いグループ(年間収入1152万円以上)の24.1%に対して、収入が最も少ないグループ(年間収入280万円未満)は34.4%と、支出の3分の1以上を食費が占める形になっています。 

 ソスペーゾ多摩が支援する家庭のエンゲル係数がどのくらいの数値になるのか。私たちの組織ではとても調査できませんが、一般家庭を上回り、かなりの高水準になると思われます。

 エンゲル係数が近年、上昇する理由は、このほか家族構成の変化など、さまざまな要因がからみ、戦後の食糧難時代のように単純に生活の困窮度と直結して考えられないという側面もあります。次の機会に改めて考えてみたいと思います。

 ちなみに政府のエンゲル係数調査は、47都道府県別の数字も出しています。県民性が見えて結構面白いです。

 ランキング上位は関西圏の大阪、京都、兵庫県が多く、2025年(県庁所在地別)は大阪市が第1位です。大阪は所得も東京に次いで高く、いわゆる分母となる総消費支出も大きいはずなのにエンゲル係数が高い。「食い倒れの街」と言われるだけあって、食べることにはお金を惜しまないのでしょうか。

 下位は年によって変わりますが、香川や鹿児島県あたりがよく顔を出します。香川は「うどんばかりで、食べ物には淡泊だから」と聞いたこともあります。 本当ですか!    (有道)

 (注1)日本でエンゲル係数の第1回発表は明治元年(1868年)。158年も続く公式経済統計の原点。明治以降、豊かな食事で国民の体力増進とともに、近代国家を目指した日本人のエンゲル係数へのこだわりを感じる。

📷 値上げが続く近所のスーパー売り場